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2024/04/27  カテゴリー/

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キミがボクを呼ぶのなら。

2010/05/01  カテゴリー/誕生日企画


「ふわぁあ~!すっごく綺麗ー!!ね!トラップ!!すごいねっ!」

そう言って満面の笑みを俺に向けるパステルに思わず目を細める。
昨日、無理やり選ばされた俺の誕生日の予定。
そのほとんどが、パステルの希望だった。
ここも、その中のひとつ。

『お花畑でピクニック!』
そう言った時のパステルの笑顔につい、釣られちまった。
だってよぉー。
あいつ、すっげぇー行きたいオーラ全開だったんだぞ!
「あのね!今、レンゲの花が満開なんだって!!
そこら辺り一面がレンゲの綺麗な紅紫色のじゅうたんで覆われてるんだよーっ!?
うわぁー!!綺麗だろうなぁ・・・!行きたいなぁ・・・・!
ね!トラップ!一緒に行こうよ!!」
そんな風に好きな女から誘われたら
「ったく・・・。しゃーねぇなぁ。」
とか口では文句を言いながらも、来ちまうだろーがっ!
でも。
本気でコイツを連れてきて良かったと思ってる。
なぜなら、コイツの嬉しそうな笑顔が見れたから。
しかも独占。


「トラップー!そんな所に突っ立ってないで、こっちにおいでよー!」
圧巻のレンゲ畑をバックにして、笑顔で俺に手招きをするパステル。
おまっ!可愛すぎ・・・!
なんだ?
俺ら実は付き合ってた?
だってこれって、どっからどう見てもデートだろ!?
しかも、俺の鞄の中にはあいつが朝からせっせと作った、愛妻弁当が!
・・・あんだよ。
いいんだよ!愛妻弁当で!
『今すぐ捕まえてやるぜ!待ってろよ、パステル!』
と言って走り出しそうになるのを、ぐっと我慢する。
馬鹿かっ!
俺はそんなキャラじゃねぇーんだよっ!
あえて不機嫌そうな顔で、ゆっくりとパステルの方に近づいていく。
「・・・おめぇ、はしゃぎすぎ。」
そんな憎まれ口を叩きながら。
「えへへー!だって、本当に綺麗なんだもん!お天気も最高にいいし、ピクニック日和だよねっ!」
そのままゆっくりと歩いて、パステルの隣に立つ。
嬉しそうな表情で、どこまでも続くレンゲ畑を見つめるパステルの横顔をチラリと盗み見る。
俺、幸せかも・・・。そう思いながら。
しばらく2人で、肩を並べて静かにレンゲ畑を見ていると。


「・・・・ステア。」
ふいにびっくりする名前を呼ばれた。
「っ!?」
驚きすぎて声も出ないまま、パステルを向く。
パステルは、目を向いて驚いてる俺を見上げて、えへ。と照れたように笑った。
俺の心臓も驚きすぎて、さっきからドキドキ鳴ってる。
「び、ビビッた・・・。」
いや。

マジで。

思わず、心臓に手を置いて沈めようとしてみる。
誰も呼ばない、俺の本当の名前。
俺自身も常日頃、使ってねぇーし、幼馴染のクレイですら口にする事のない名前。
それをパステルが呼んだ。
本当の『俺』を呼んだ。
そんな気がしたんだ。
「あはは!トラップ、驚きすぎだよー。」
でもそれは、一瞬で戻ってしまった。
そう言って、ケラケラと笑いながら
「なんかね。突然呼びたくなっちゃったの。」
パステルはそう言った。


本当だったら、あの一回で終わっていたのかも知れない。
でも。
俺は終わって欲しく無かった。
気がつくと、無意識に体が動いて・・・・

そっとパステルの耳に唇を寄せて
「その名前がいい。」
ここにはパステルしかいないけど、パステルだけに聞こえる声で。
俺の本心を告げる。


呼んで。


君の声で呼んで。


本当の俺を。


少し驚いた顔をしていたパステルは俺の赤くなった顔を見て、フワリと微笑んだ。


「ステア。」
やべ。
嬉しすぎる。
さっきよりも口元が緩んできて、それを手で覆い隠す。
「ステア?」
チラリと視線をパステルに戻せば、目が合った。
その瞬間。

「ステア、お誕生日おめでとう!」

ダメだ。
嬉しすぎて立ってられねぇ。

こんな幸せとパステルの笑顔が未来永劫続くように、俺はこれから頑張ろうと心に決めた。


END

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