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2024/11/24  カテゴリー/

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一人っきりの誕生日???

2010/04/27  カテゴリー/誕生日企画


「暇だ・・・。」

返事の返ってこねぇ、俺の呟き。
今日は俺の誕生日なのに、パーティの面子誰一人として家に居ない。
「本当にゴメンっ!出来る限り早く用事を済ませて帰ってくるからね!」
出かける最後の最後まで、アイツはすまなそうに謝っていた。
別にこの年になっていちいち、誕生日パーティもないだろう。
・・・まぁ。祝ってもらえれば、それはそれで嬉しいもんだが。
いつもは賑やかなこの家に、今日は誰の笑い声も聞こえなかった。

「やっぱ暇だよな・・・。」

もちろん返事が返ってこねぇが、あえて声に出してみる。
誰にも眠りを邪魔される事の無かった俺は、昼過ぎまでたっぷりと寝た。
もう、俺の中には睡魔のカケラも残ってねぇ。
そろそろ腹も減ったし、猪鹿亭にメシでも食いに行くか。
猪鹿亭に行けば、アイツにも会えるしな。
そう。
パステルは今日、ルタの代わりをリタに頼まれて猪鹿亭で働いている。
なんでも、ルタが林間学校で留守らしい。
俺は財布も持たずに家を出た。


いや。
正確には、家を出ようと玄関の扉を開いたが、辞めた。
なぜなら、玄関の向こうに、一生会いたくないと思っていた奴が立っていたから。
そのまま見なかった事にしようと、扉を閉じる。
なっ!?なんで、アイツがこんな所にいるんだよっ!?
しかも、俺の誕生日にっ!

「トラップ。そんなに嫌がる事ないだろう?」
笑いをかみ殺しながら玄関のドアをノックしてくる奴。
俺が毛嫌いしている事を知りながら、なんでノコノコとこの家に来るんだよ!!
・・・・・にしても、今の俺の態度は大人げねぇ。
今日、ひとつ年を取ったはずなのに。
(ちっ!)
渋々と玄関のドアを開く。
「いきなり訪ねて来て、なんの用だよ。・・・ギア。」
最高に不機嫌な俺の態度に苦笑のギア。
「用は無かったんだが、近くを通りかかったものだから訪ねてきたんだが・・・。えらく嫌われたものだな。」
そう言って肩をすくめた。
「あっそ。残念でした!今日は俺以外、全員出払っちまってるぜ。」
お前が会いたいと思っていたパステルもいねぇ。
じゃあな。そう言って扉を閉めようとした俺に、ギアの意外な一言。
その一言が俺を引き止めた。
「それはちょうど良かった。実は、トラップとゆっくり話が出来たらいいなと思って来たんだ。」
「・・・・・は?」
何言ってんの?コイツ。
俺とゆっくり話したいって、どう言う事だっ!?
「・・・・ワリィけど、俺はあんたと話す事なんて何もねぇ。」
しかし、再び閉じかけた扉を、ギアはがしっ!と掴んで放さない。

「っ!!あんたと話すことなんかねぇって言ったの聞こえなかったのかよっ!?」
そう言って、俺はぎぎぎぎ・・・っ!と、扉を閉じるべく、力いっぱい引っ張る。
しかしギアも、外側から笑顔で扉を開こうっと必死だ。
「折角訪ねてきた知り合いにその態度はないだろう?お茶を出してくれるくらいの礼儀を身につけたらどうだ?」
引きつった笑みを浮かべながら、ギアはすごい力で扉を引っ張る。
(こ、こいつっ!!なんつぅー力、してんだっ・・・よっ!)
ギアとトラップの押し問答ならぬ、引っ張り問答が始まった。
年季の入った扉が、「ギギギギギギ!」と悲鳴を上げている。
2人とも扉を自分の味方にしようと必死なのだ。
「はっ!俺には礼儀なんてもん、一切身に付いちゃいねぇーんだよっ!」
ギギギギギギ・・・!
「トラップ。そんな態度でパステルを振り向かせる事は出来ないぞ!」
ギギギギギギ・・・・!!
「う、うっせぇー!ソレとアイツは関係ねぇだろーがっ!ってか!いい加減その手を放せっ!!」
どっちも引けない地味で熱い戦いは、そういつまでも続かなかった。


「あ、あのぉー。お取り込み中、申し訳ないのですが・・・。」
場違いなオドオドッとしたその声の主。
それは足の間にしっぽを丸めたコボルトだった。
さっきから悲鳴を上げ続けていた玄関の扉は、ようやく収まった戦いに安堵した。
扉の気分はさながら、彼らの中心にいるであろう、彼女の気分だった。
ま。
本物はそんな火花が彼らの間に散っている事など、知るはずもないのだが。
「おめぇ!JBのおっさんとこのコボルトじゃねぇか?」
トラップのこの発言に、ウンウン!と嬉しそうなコボルト。
その横でトラップとコボルトのやり取りを、不思議そうに聞いているギア。
「そうです!さすがトラップ様!よくぞ覚えててくださいました!実は今回、ご主人様からお届け物をお預かりして、こちらに参りました。」
そう言ってコボルトは肩から下げた鞄から、小さな箱を取り出した。
それはまるで、誕生日プレゼントのように綺麗にラッピングされた箱。
「トラップ様にご主人様より、お誕生日プレゼントです。そして、これを持ってまた遊びに来い!と仰っておられました。」
コボルトから受け取って、トラップが箱を開けるとそこには。


「ヒュ     !っすっげぇー!!コレ、最高級のエメラルドじゃねぇか!しかもこんなにっ!すげーぇ!!」
JBからのプレゼント、それは最高級の透明度を誇るエメラルドで作られたダイス。
その種類、4面、6面、8面、12面、20面の5種類!
思わず口笛を吹いてしまうほどのトラップの喜びように、コボルトはニコニコと嬉しそうに続けた。
「エメラルドはトラップ様の誕生石です。しかもこの石には幸運や幸福といったパワーがあるそうですよ。是非、そのダイスを持ってゲームで対決しに来て下さい。ご主人様とお待ち申し上げてます。」
「おうっ!JBのおっさんに、サンキュ!必ず遊びに行くって伝えてくれ!」
コボルトは、「はい!必ず伝えます!」そう言って去って行った。
すっげぇー!
マジで、すっげぇー!!
さすがブラックドラゴンなだけあるっ!
ってか!
ブラックドラゴンから誕生日プレゼントってすげくねぇー!?
太陽の光を浴びて、まばゆいくらいに光り輝く、エメラルドのダイスたち。
それを横から覗き込むひとつの影。

(ちっ!コイツの存在をすっかり忘れてたぜ・・・)
「かなりの代物みたいだな。そんなダイスをプレゼントしてくれるJBって何者なんだ?」
さっきからJBやら、ご主人様やら、おっさん呼ばわりされている謎の人物。
ギアの疑問は当たり前だ。
仕方なしに教えてやる。
どうせ、誰も信じねぇだろうからな。
「ゲーム好きのただのブラックドラゴンのおっさんだよ。」
「・・・へ?ブラックドラゴン・・・?ゲーム好き?おっさん?」
「信じなくっていいぜー。俺ら、ブラックドラゴンとゲーム友達だからなっ!」
ニヤニヤと笑いながらギアを見る。
眉間にグーッとしわを寄せたままのギア。
けっけっけっけ!
嘘は吐いてねぇからなっ!
パチン!と箱を仕舞うと、どこからともなく、

「めぇええええぇ・・・!!」
と懐かしい声が聞こえてきて振り向く。
「あ!」
思わず声を上げる。
家の前の坂を駆け上ってくるアイツは確か・・・!
隣で「なんだ?」と目を丸くしてるギアを取り合えず、ほっとく。
「トラップ様ですね!小包ですめぇえっ!」
まえに、マリーナの行方不明を知らせるアンドラスからの手紙を届けてくれた白山羊が、両手で小包を抱えている。
相変わらず息も絶え絶えな郵便屋。
「水持ってきてやるから、ちょっと待ってろ。」
水を貰って一息ついた白山羊は
「アンドラス様とマリーナ様からです。」
と言って小包を俺に渡した。
箱の上には
『HAPPY BIRTHDAY!TRAP!!』
のメッセージカードが付いている。
「サンキュ!確かに受け取った。」
そう言うと郵便屋は
「毎度ありがとうございましためぇえっ・・・!」
と言って走り去った。
「くっくっくっく!」
突然聞こえてきた笑い声。
「・・・・あんだよ。何がそんなに可笑しいんだよ。」
少しムッとしながら、ギアを睨むと、
「いやっ、君たちのところには面白いお客さんがたくさん来るんだなぁ。と思ってね。」
そうしてまた一人、くっくっくっく!と笑い出した。
っけ!一人で笑ってろ!
「つーっか!いつまで居る気だよ!?さっさと帰りやがれっ!」
手でシッ!シッ!と追い払う。
でもギアも懲りない。
「いやいや。ここに居れば面白いものが見れそうだからね。
それに、今日は君の誕生日なんだろう?一人ぼっちで暇そうだし、しばらくお邪魔するよ。」
そう言って勝手に家に入っちまった!
「あっ!こらっ!待てっ!勝手に入ってんじゃねぇよっ!」
ったく!
何で折角の誕生日を、こんな奴と2人っきりで過ごさなきゃならねぇんだよっ!?
ふっざけんじゃねぇ                    っ!!


END

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